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滝行

自転車のトレーニング(以下チャリトレ)には、モチベーション的にも何か目的をもたせたい。ゴミ出しとか、買い物とか、お寺で朝課とかのね。さて今日は何しに行くっぺか。


答えは「滝に行く」。


先日冬期閉鎖が解除された精進ヶ滝まで行くことに。自転車はちょっときついが、ムダに化石燃料を使いたくない私としては、とりあえず様子見というつもりで出掛けてみた。空庵から上はこれ以上先に民家はないという林道。麓へ向かうのと違って行きが登りになる。それも、麓への坂よりもかなり勾配のキツい坂がずっとずっと続く。一度軽くチャレンジして「これは本気モードでないと無理」と諦めたことのある難所だ。


実際、ふだんは「ところどころで降りて歩く」のが「ところどころで自転車に乗る」ことになった。ひたすら登って45分くらいで峠に着くと、その先に精進ヶ滝(写真の赤丸部分)の見える遠望台があった。



遠望というだけあって遠い......


その先はゆるやかな下りで、苦行はそこで終わり。しばらく行くと駐車場に着いた。もみじの木に愛車の「観音くん」をくくりつけて歩く。<ツキノワグマに注意>の看板あり。


その前、峠の手前で一休みしているとき、ハンドルにつけたiPhoneに久美子さんからのLINEが届いた。返信したあと、その場所の写真を撮って、「もし夕方になっても連絡なかったら、クマに食われてるかもしれない」とメッセージを送るつもりが、もう電波が届かなくなっていた。


......ということは、クマどころか、怪我しても救急車は来てくれない。クマ避けの鈴も持ってこなかったし、ちょっと偵察だけして帰ることにした。



さて、遊歩道はこんな吊り橋からスタートする。



アガる〜!


渓谷沿いに歩き始めると気分が上がり、ぜんぜん帰る気がしない。さっき、単独行のおじさん✖️3に会ったからまあ大丈夫だろう(どういう根拠だ)。それより、もしクマがいたら、逃げるより先に写真を撮りそうな自分に気づいた。


それにしても、この滝めっちゃ気に入った。地形の妙、岩と清流、苔、マイナスイオンたっぷりと私好みのポイントがズラリ。滝のスポットがいくつかあるので、もうちょっとだけ先に進んでみよう。



大迫力の滝を横目に、急階段を上る


午後から出かけたためか、もう誰もいない。間違って滝に落ちたりしても誰も助けにこないな。と思いつつ、もはや探検好きな私の好奇心は止められず、気づいたらもうトップの滝、さっき遠望台から見たあの滝まで到達していた。



あんな遠くに見えたのに


ただただ楽しかった。久しぶりにこんな気持ちで山を歩いた。相棒が元気だったころはよくこうして小さな冒険をしたもんだ。老年に差し掛かった私自身、あと何年こんなお転婆ができるのだろうか。


それにしても、こんなすばらしい滝なのに、人がわらわらいないのがいい(というか私ひとりだよ)。さすが山梨、さすが名水の地。こんなに水に恵まれるのは、実にありがたくしあわせなことだ。イラクじゃ雨が降らなくて水をめぐる争いが起きているそうだ。


自然の恵みは貪らず、大事に大事にみんなで分かち合わないといけない。


それなのに、人間は地球を汚すどころか月にまで進出して、また月の利権をめぐっていやらしい競争が始まりつつある。みんなみんな神様のものなのに......。きょうも世界のどこかで殺戮が行われ、人間は自分がより有利になることを考えて生きている。


「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」宮沢賢治

滝に打たれてはいないけれど、そんなことを思った滝行だった。


*思わせぶりなこのタイトル、<たきぎょう>ではなく<たきゆき>と読んでくだされ。


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