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春の空庵ステイ

暖かくなって、久しぶりに空庵ステイのゲストがやってきた。今回のテーマは食生活。1日をともに過ごすなかで、ふだんどういう生活をしているのか、どんなものをどういうふうに食べているのかを聞いたり、一緒に食事をつくったり、食べたりしながら適切な食生活について考えるプランを組んだ。


食生活のアドバイスはその人を知らないと難しい。ふだん少食、菜食など意識的に心がけている人か、あるいは肉食、飲酒を含む外食が多い人なのかでも異なるし、その人の体質、性格などもある程度は把握していないと、的外れになってしまう。


ゲストを駅へ迎えに行くので、土地の案内もかねて外でランチをすることが多い。今回は古民家のマクロビ・ヴィーガンのお店へ。私自身はマクロビもヴィーガンも実践していないし、それらを推奨しているわけでもないのだけれど、自分では作らない・作れない系の芸術的なお料理だけに、ここのランチはひとつの食のあり方として紹介してたい。


今回特においしいと思ったのが、わらびの煮こごり(写真左)、白いさつまいものカレー(死写真中央)。そして、白いワサビのお花(写真左上)が見た目のかわいらしさとともに香りのアクセントとして優れた働きをしていた。



少なめに見えるけど、玄米ごはんとでお腹いっぱいになる


と絶賛しておいてナンだけど、私にはマクロビは少々重い。夕食は消化のいいものにしようとキチュリをつくることにした。ついでにアーユルヴェーダの講座もちらっと入れて、ギーを作るところからキチュリの調理、そして翌朝にはネティポットを使った鼻うがいまでを実習するコースになった。


久しぶりに作ったけど、やっぱりキチュリはいい。朝のお粥は断然日本のお粥がいいけど、夕ご飯ならキチュリに軍配が上がる。なんといっても簡単だ。そして、私のレシピは超テキトーなので、ハードルが10センチくらいまで下がる。「これなら作れそう」と思ってもらえるのが何よりいい。満腹になるまで食べても、翌朝にはすっきり消化できて体は軽い。


それに、このキチュリ用にバスマティを取り寄せておいたのだけれど、今回初めて寄ってみたファームの売店で自家製のジャスミンライスを売っていたので、急遽そちらに変更したのもよかった。このお店は土日しかやっていないのだけど、土日に来たゲストはお連れしたい。


ギーは焦がしやすいので冬なら薪ストーブで作るところだが、さすがに日中はそこまで寒くないので、三口コンロのいちばん小さいところを弱火にして、最後若干色がついてしまったけれど、まあまあきれいなギーができた。


空庵ステイのよいところは、ゆっくりたっぷり話せること。けれど、話を聞くよりもマイソールで練習を見て、身体を触ることが何よりその人を知る方法だとも感じた。漢方で言うなら、問診よりも望診(目)、聞診(耳)、切診(触)のほうが即座に状態を把握できるようなもの。


2日目の朝ごはんにはたいてい「空庵定食」を食べていただく。これが私の基本食であり、絶対食であり、おすすめの食事だ。侘び飯だけど玄米ではなく、地元産の白米にそばの実を入れたものを出すことが多い。粗食だけど、お客様が来たときの、ちょっとだけ菜が多めの一汁一菜。なんだかんだいって、この食事がいちばん評判がよろしい。


参加者には事前に食べられないものなどを確認しているが、匂いがダメで納豆が食べられない人がいた(空庵定食は納豆がもれなく付いてくる)。ところが、道の駅で売っているプレミアムな黒豆納豆は、食卓に上がっていても匂いが気にならないというので、ちょっと食べてみる?とそそのかしたところ、なんと食べられた。歴史的瞬間だ。素材の力かもしれない。


というように、空庵ステイでは、景色、特に山々の景観を楽しみ、この土地の雰囲気や粗末な食生活を味わい、私の暮らしぶりを垣間見て、その一部を体験する。それを東京に持ち帰って刺激にしたり、参考にしたりしてもらえたらうれしい。


冬の間は寒くて無理だったけれど、これからの季節は寝る前の陰ヨガやリラックス系ヨガなども可能だ。それから気軽なハイキングなどもおすすめ。空庵より先には民家がなく(これを集落限界と呼んでいる)、ずっと上っていくと精進ヶ滝という日本の滝百選になっている滝があり、往復でも1時間程度の気軽なハイキングができる。将来的にはいつも眺めている山々にも登ってみたいけれど、まずは遊歩道歩きからだね。


今回、ちょうど名所の桜は終わってしまっていたけれど、それまで存在に気づかなかった枝垂れ桜の一角がちょうど見ごろになっていて、小さなお花見も楽しめた。春の嵐が吹き荒れて、ここ最近ではいちばん冷え込む日となったけれど、その分山はクリアに見えて、まぶたの裏に刻んだお土産を持ち帰ってもらえたことがなによりだった。



桜は終わっているけれど


気分転換、転地療養、ヨガや禅の学びと実践、あとは漢方でもアーユルヴェーダでも、ゲストの希望によりオンデマンドのステイを組みます。5月までのよい季節をどうぞ逃さずいらしてくださいませ。

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